紗奈

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 再び見上げると、窓から出た細い腕が揺れている。手を振っているのだろうか。自分に振っているのかは分からないから、勘違いでも恥ずかしくないように、紗奈は小さく肩のところで手を振り返した。 (あの窓、何階だろう……?)  1階から順に数えてみるが、15階のあたりで(まばた)きしたら、どこまで数えたか分からなくなってしまった。洗濯物の一つも出ていない窓は目印がなく、見分けがつかない。  上から数えてみようかと目を上げると、一度引っ込んだ手がまた一枚、折り紙を投下した。それは上空で風に吹きつけられてタワーマンションの外壁を擦るように落ち、敷地内の芝生に着地する。絵が書いてあるのは落下の途中でちらりと見えたけれど、何の絵かまでは分からなかった。  もしかしたらあの子は、数日続いた雨のせいで外に遊びに行けず、退屈しているのかもしれない。 (つなぎ合わせると漫画になってたりして)  興味は引かれたけれど、いつまでもここに立っていたら学校に遅れてしまう。一度拾った折り紙を道に捨てるわけにもいかず、紗奈はそれを折りたたんで制服のポケットに入れた。 (……まさかね)
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