絢子

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 いつもこれだ、と、絢子は苛立つ。叱るとだんまり。泣くでも謝るでもなく、嵐が過ぎるのを待つかのごとく、唇を尖らせて黙り込む。  5歳ってみんなこうなんだろうか。可愛げのない態度に憎しみさえ感じてしまう。  絢子は知っている。きららは反省など少しもしておらず、いたずらがバレたことに「チェッ」と思っているだけ。そして、絢子の気が済んで、夕飯にありつけるのを待っているだけなんだと。それを分かっていながら、他にどうすればいいのか分からない。  絢子はこれ見よがしに大きく息を吐き、うんざりだという顔を作ってきららに告げた。 「絵本を片付けて、手を洗って来なさい。ごはんにするから」  きららはちらりと絢子の顔色を伺い、絵本を棚にしまうと、横をすり抜けて部屋を出て行った。  正面の壁に造られた、小さなすべり出し窓が開いている。下部から外側に押し開けるタイプの換気窓で、最大で10センチ程度しか開かない。だからこそ絢子は、自分のいない間はこの部屋にいるようにときららに厳命しているのだ。  たかが折り紙とはいえ、28階から物を落とすなんて非常識にもほどがある。 (あの子、なんであんななのかしら……どうしてこんなことになるの……)  あれほど望んだ子どもなのに、全く可愛いと思えない。あの子が家にいると思うだけで、仕事で疲れた体がさらに重くなる。気分転換に旅行に行くこともできず、自分だけの自由な時間がないことでストレスが蓄積していく。
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