きらら

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きらら

(おなかすいたなぁ……)  きららは(から)になった戸棚を閉め、冷蔵庫の扉を引いた。お昼に一袋ずつ食べるように言われていたパンも、昨日でなくなってしまった。冷蔵庫にはいろいろな物が入っているけれど、そのまま食べられそうなものは見当たらない。 (おかあさんなんかきらい。いつもおこってばっかり)  買い置きしてあったパックのジュースや牛乳は全部飲んでしまった。蛇口から水は飲めるけれど、今朝から何も食べていない。  お母さんが、きららに食べ物をくれなくなったからだ。  食べ終わったお弁当の容器をそのままにしているせいか、リビングから変な匂いがするようになった。できれば行きたくなかったけれど、空腹には勝てない。  きららはそっとカウンターを回り込み、忍び足でフローリングを進んだ。お母さんと目が合わないように気をつけながら、床に散らばったみかんをかき集める。  なんとか5つのみかんを胸に抱えて、きららは自室に戻った。ドアを閉めてそこにもたれる。 (だいじょうぶ、だいじょうぶ……)  ドキドキしたけれど、お母さんは追いかけて来ていない。  みかんの皮をむき、白い筋を取るのももどかしく口に押し込む。甘い果汁にホッとして、続けて2つ一気に食べた。ベタベタの手を舐めてからパジャマで拭くと、やっとドキドキが収まってきた。
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