12人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
「ご苦労だったな」
花井の労いの言葉が空しく聞こえる。
時間は夕刻を迎えていた。防犯課の署員は揃ってはいたが、山田の件もあって重い空気に包まれていた。一足早く戻っていた大瀬は背中を丸くして静かに席に着いている。
「何か、ありましたか?」
「徳利達も外の騒ぎで気づいただろう。マスコミが嗅ぎつけてきた。三木さんが、徳利達がマスコミに捕まる前に署で匿えとのことだ」
「そういう事ですか・・・」
「明朝に県警が会見を開く、それまでに聞きたいことがあるそうだ」
「県警は、何と発表する気ですか?」
花井は一瞬、呼吸で間を置いた。
「今回の件は、山田巡査の単独犯行(ということ)になった」
防犯課の一同が、花井に視線を向けた。
「単独犯行?」
大瀬が思わず立ち上がった。
「そうだ、大江スミからの一連の事件は、山田巡査による犯行だ」
「(ということ)になったって、どういう意味です?」
大瀬が上ずった口調で、花井に詰め寄った。
「おい、大瀬・・・」
「さっき言ったじゃないですか、言い方が引っ掛かるんですけど」
「大瀬君、君達が大江宅に入った時、中で人影を見たと言っていたね」
「それが何か?」
「それが山田巡査である可能性が高いんだ」
「どういうことです?」
「大江宅の裏口のドアノブから、山田巡査の指紋が検出された」
「まさか・・・いや、それは、確か家に入る前、山田さんが周辺を見張っていたから、その時に・・・」
「いや、違う」
「徳利さん、違うって何が?」
「山田巡査には、門の所で見張るよう命令した、あの時じゃない」
「そんなの、中に入っていたらわからないじゃないですか」
「大瀬君、ドアノブだけじゃない、遺体が切断されたとされる物置小屋にも山田巡査の指紋が検出された」
「まさか・・・そんな・・・」
「恐らく、山田は大江さんの遺体を切断後、ゴルフバッグに詰め込んで玄関に置き、徳利達が来るのを待ってたんじゃないか?」
「そうか、だからあんなに早く現場に来れたのか・・・・」
「まあ、実際は現場に来たふりをしていたというわけだ」
「動機は?何のためにそんなことを?」
「それはわからん・・・ただ、大江スミは、大瀬君が最後に巡回した家なんだろ?」
「そう、です・・・・」
「そして、佐取交番では、君を人質に取った」
「・・・」
「つまり、大瀬君に対する恨みが積もってこんな事を・・・」
「じゃあ、加山京子は?彼女は何者なんです?」
「彼女は、山田巡査の計画に巻きまれたんだ」
「巻き込まれた?」
最初のコメントを投稿しよう!