12人が本棚に入れています
本棚に追加
……誰? ……固まる私。
その美しい人は、神殿から私の方をじっと見ていた。
色白の顔に目尻がスッと上がった目。黒髪は珍しい形に結い上げてあり、その形は動物の耳を形どっているかのように見えた。
そして鮮やかな青色のマウンテンジャケットを着ているが、なぜか手には……稲穂の束を持っていた。
この人は……何?
っていうか……「人」?
フリーズしている私にその謎の存在は突然言った。
「よっ」
「……よっ」
しゃ、喋った…!?
ていうか、普通に挨拶返してしまった!!
「お前の肩書きは何じゃ」
……え? なに、急に?
「……肩書き……? ですか?」
「勝手になんかの親善大使とか名乗っておるであろう」
「……勝手に……”六甲親善大使” で……す……」
そう。六甲山が大好きすぎる西宮市民の私は、SNS上でそんな冠を自分に勝手に付けていた。
「ではお前の得意の神は何じゃ」
得意? 得意の神ってなに? 好きな神様でいいの……?
「……お稲荷さん……ですか……?」
「ここはどこじゃ」
「高取山の高取神社……です」
「ここは六甲山。六甲の『高取稲荷大神』と呼ばれる場所じゃ」
「は、はぁ……」
「六甲山と稲荷。この二つがここでは強く重なり合っておる。だからお前は ”接続” することができたのじゃ」
接続?
何の接続?
ポカーンとしていた。突然のことに、頭の中が冷静なのかパニックなのか……ぐるぐると自分でも見失っている状態だった。
「本当なら、もっと早く繋ぐこともできたのに……遅い。来るのが遅い! お前、いつからここに来る宣言をしていた?」
「え、えーと……なんのことでしょう…?」
「1年半ほど前のfacebookで『高取神社に来る』と宣言しとるではないか!」
ぎゃー……ッ! 確かに以前そんな事を書いた覚えが!
なんで知ってるの!? コワッ。
「……お前……今」
急に謎の存在の目線が厳しくなった。
「私のことを『怖い』と思ったであろう?」
「え? いや。そういう……別に怖いと言ってもそんな……」
言葉のノリからつい思っただけなので焦りつつ、謎の存在(神様? なのかな?)を見てみると、少し固まったような表情をしていた。
「……なぜじゃ……なぜそうやって怖がる」
「え?」
「なぜ人間はそうやって我ら『稲荷』のことを怖がるのか」
そういうと謎の存在(口ぶりから察するに、お稲荷さん? なのかな?)は、静かに目線を下に落とした。
あれ…… 神様、悲しんでる……?
そう思ったその時だった。
最初のコメントを投稿しよう!