プロローグ。

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 ……誰? ……固まる私。  その美しい人は、神殿から私の方をじっと見ていた。  色白の顔に目尻がスッと上がった目。黒髪は珍しい形に結い上げてあり、その形は動物の耳を形どっているかのように見えた。  そして鮮やかな青色のマウンテンジャケットを着ているが、なぜか手には……稲穂の束を持っていた。  この人は……何?  っていうか……「人」?  フリーズしている私にその謎の存在は突然言った。 「よっ」 「……よっ」  しゃ、喋った…!?   ていうか、普通に挨拶返してしまった!! 「お前の肩書きは何じゃ」  ……え? なに、急に? 「……肩書き……? ですか?」 「勝手になんかの親善大使とか名乗っておるであろう」 「……勝手に……”六甲親善大使” で……す……」  そう。六甲山が大好きすぎる西宮市民の私は、SNS上でそんな冠を自分に勝手に付けていた。 「ではお前の得意の神は何じゃ」  得意? 得意の神ってなに? 好きな神様でいいの……? 「……お稲荷さん……ですか……?」 「ここはどこじゃ」 「高取山の高取神社……です」 「ここは六甲山。六甲の『高取稲荷大神』と呼ばれる場所じゃ」 「は、はぁ……」 「六甲山と稲荷。この二つがここでは強く重なり合っておる。だからお前は ”接続” することができたのじゃ」  接続?  何の接続?  ポカーンとしていた。突然のことに、頭の中が冷静なのかパニックなのか……ぐるぐると自分でも見失っている状態だった。 「本当なら、もっと早く繋ぐこともできたのに……遅い。来るのが遅い! お前、いつからここに来る宣言をしていた?」 「え、えーと……なんのことでしょう…?」 「1年半ほど前のfacebookで『高取神社に来る』と宣言しとるではないか!」  ぎゃー……ッ! 確かに以前そんな事を書いた覚えが!  なんで知ってるの!? コワッ。 「……お前……今」  急に謎の存在の目線が厳しくなった。 「私のことを『怖い』と思ったであろう?」 「え? いや。そういう……別に怖いと言ってもそんな……」  言葉のノリからつい思っただけなので焦りつつ、謎の存在(神様? なのかな?)を見てみると、少し固まったような表情をしていた。 「……なぜじゃ……なぜそうやって怖がる」 「え?」 「なぜ人間はそうやって我ら『稲荷』のことを怖がるのか」  そういうと謎の存在(口ぶりから察するに、お稲荷さん? なのかな?)は、静かに目線を下に落とした。  あれ…… 神様、悲しんでる……?  そう思ったその時だった。
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