プロローグ。

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 ……確かに私は六甲山とお稲荷さんが好きだ。  だからこそ「勝手に六甲親善大使」も名乗っていたし、稲荷神社にも何度も通いつめていた。  でも、でも、でも!   本当にお稲荷さんが出てくるなんて……思わない……  しかも困ってるっぽい。  どうしてこんなことになったのかわからないけど……。 「……えーとですね……世間一般で怖い認定されている『お稲荷さんの誤解を解く』をやれば……いいのでしょうか……?」  ほのかな覚悟らしきものも決め、真剣な表情で呟いた。 「……お前、たぬき顔だけど」 「は?」  ボソッと呟き返した豊受姫命の言葉に、子狐たちが笑いをこらえた。たぬき顔って、私の事? 「プッ。『タヌキがキツネのことを書く』……稲荷はキツネじゃないけど……ププッ……」 「いや、なに笑ってんの?」  確かに私は丸顔のたぬき顔だけど。可愛いくせに失敬なコたち! と思いつつ振り返ると、もう豊受姫命の姿はそこになかった。  ボーゼンと突っ立っている私に子狐眷属たちは言った。 「期待してるって」 「ママに期待してるって。全国の稲荷が」 「ぜ、全国ッ? っていうか ”ママ” ? 」 「だって子どもたち、そう呼んでるし」  確かに息子二人はそう呼んでいる。  とにかく訳が分からない。 「確かに私はお稲荷さんが大好きだったし、これまでもブログやFacebookではそんな事を書いてきたけど……」  ちなみにブログのタイトルは "神仏広告代理店(しんぶつこうこくだいりてん)"  神社参拝のレポや、神様について思う事を愛情いっぱいに書いていた。  だからだろうか……  溢れる愛が標高300mを超えたのだろうか……  どうやら六甲山頂の稲荷神社の神様は、私と ”神様” の回路をガッチリ接続したようだ。
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