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第十八話 脱走
午後八時を回った。
日は完全に暮れ、船窓から見える景色は真っ暗だった。
埠頭の街灯の明りだけがぼんやりと見える。
「よし、行くか」
シーツを裂いてそれを結わえた『ひも』の片方をベッドの足に結び、その紐を窓の外に垂らし、私はそれをつたって窓から出て外に降りた。
始めは窓からそのまま海に飛び込む積もりでいたが、真っ暗な海に飛び込むのは危険だし、第一大きな音が出る。
それでシーツを裂いた紐を思いついたのだ。
「私って天才っ!」
そう思ったのも束の間。『ひも』の長さが足りなかった。
「え、まじ!」
岸壁まではまだ距離がある。昼間よりも離れてしまった様だ。
船の壁を蹴って岸壁まで飛んだとしても、うまく着地できる自信はない。
私は意を決した。
「ええい、ままよ!」
私は手を離し、そのまま海に飛び込んだ。
ザブーン!
大きな音がした。
「急がなくちゃ」
私は急いで岸壁まで泳ぎ、船止めからぶら下がっているロープを見つけてそれを伝って岸壁の上に上がった。
「マリーさん、ごめんね」
そう呟いて、私は一目散に走り出した。
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