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「落とし物だよー!」
「きゃっ」
夜、部屋で勉強をしていると誰かが窓を叩いた。なに?なんなの?ここ2階よ。
窓をカラカラと開けて女の子が入ってきた。ピンク色の髪、胸にはやたらとデカいリボン、フリルのたくさんついたパニエ、魔法ステッキ…やだ、この子、魔法少女じゃないの!
「なんなのあんた?魔法少女のコスプレして人の家に上がり込むって犯罪よ、犯罪!」
「誰がコスプレよ、正真正銘の魔法少女だっての!」
面倒くさそうな子だ…あたしはじっくり自称魔法少女を見た。
げっ。
「あんたパッと見は若いけど、少女じゃ無いじゃない!おばさ…熟女じゃない、いい歳した熟女がそんなロリなコスプレして魔法少女とか言ってんじゃないわよ!」
「うるさいうるさいうるさい、捻くれた子供ねえ、そんなんだから振られるのよ」
「うるさいうるさいうるさい、人の気持ちを抉るようなこと言うなっ、その恋心はもう捨ててきたわよ!」
「じゃーん♪」
「な、なによ?」
「落とし物だよ!はい、これ!」
魔法熟女は校舎裏に捨ててきた恋心を、あたしの手のひらに載っけた。
「いくら捨ててもその恋心は、あなたの心の中からまた湧き上がってくるわ。だってそうでしょ、気持ちが残っているもんね。だったらそんなことを繰り返さないために、今!目を逸らさないで現実をしっかりと受け止めなさい!悲しかったらおもいっきり泣きなさい!そうやって残っている気持ちを早く消化しておかないと、この恋心、すごく長く引きずることになるわよ」
そうね、5年も想い続けた人のことをすぐに諦められるわけが無い。また想いが積もっていく、そして次の恋に進めない。きっとそうだ。
あたしは泣いた。声を出して泣いた。涙がポタポタと落ちた。
「大丈夫?」
俯いて泣くあたしの顔を、魔法熟女は下から覗き込んで、優しく声をかけてくれた。その優しさにあたしの涙腺は決壊して、彼女の顔に涙がポタポタ落ちていく。
「そう、それで良いのよ。思いっきり泣いてスッキリしたらいいんだよ。私はロリコス魔法熟女。恋心を捨てた女の子がいたら私が拾ってきてあげる。それを本人に返して切なく泣いてもらうわ。だって女の子の失恋の落涙が私の若さと魔法のエネルギー源なんだもん!」
おしまい
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