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自宅に帰り着替えをして勉強机に座る。 机の上には3年分の実力テストの過去問が置かれている。 夏休み最終日の昨日圭介が部屋のドアの隙間に入れておいてくれたものだ。 過去問を手に取り眺める。 圭介がくれた過去問は教科ごとにそれぞれ2枚ずつあり、1枚は書き込みがなく解答もないがもう1枚には解答とおびただしい書き込みがされている。 問題文を読み取るポイント、使う公式や重要語句、さらには問題の元となった単元が掲載されている教科書のページまで記載されており、いつでも教科書で振り返ることができる。 (こんな使える過去問あったら他のいらないよ!) 解答のある方の過去問はコピーではなかった。 圭介の書き込みの原本だ。 御礼の書かれたメモで圭介の字を見ているので知っていたが、とても丁寧で読みやすい。 勉強のできる人はノートもキレイだというが圭介もそうなのだろう。 (急に雲の上感がスゴイんですけど…) ご飯を食べず貧血を起こし無様に行き倒れていた圭介の姿を見ている京香からするとギャップが大きくにわかに信じがたい。 それでもこの過去問を見ていると学年一位は伊達ではないのだろうと思えてくる。 ともかく重要なレベルアップアイテムを手に入れることが出来たのだ。 活かして結果を出さないと圭介にも失礼に当たるだろう。 夕方シフトのバイトまで黙々と過去問の演習問題を解いた。 その日の夜10時前。 既にバイトから帰宅していた京香はお風呂を済ませ机に向かっていた。 明日は土曜日で昼シフトのバイトが入っているので少し遅くまで勉強するつもりでいた。 ガチャッ 隣りの部屋のドアが開いた。 (琴吹さん帰って来た) これまで隣の家のドアが開こうが気にしてこなかったが琴吹と知り合って以来妙に意識してしまう。 また行き倒れているのではないかという心配もある。 ガタッ シーーーン… (ん?不穏な音が…) その後足音もせず静寂が続く。 不安になってきた。 『また』はありうる。 気になって勉強が手につかない。 はぁ… ため息をつき廊下に出て隣の部屋のドアの前に立った。 「琴吹さん…?大丈夫ですかー…?」 夜も更けているので小声で話しかける。 返事がない。 悪いとは思いつつドアノブをひねってみると鍵がかかっていない。 そっとドアを開けて部屋を覗くと 「ひっ…!また!!」 予想通り圭介は玄関でまた倒れていた。 「琴吹さん、琴吹さん」 駆け寄りうつ伏せに倒れている圭介に何度も声を掛ける。 「あー…やってしまったー…」 くぐもった声が聞こえてきた。 「意識あります?」 「うん…本当に申し訳ない…」 声がはっきりしてきた。いつもの貧血のようだ。 ゆっくり身体を起こす。 「そう思うなら倒れないでくださいよ」 「倒れたくて倒れてるわけじゃないんだけど…」 「私が様子を見に来なかったらどうなってたんですか」 「朝まで寝てたと思う」 「そういう問題ではなくてですね…」 「はは」 「…食べてないんですか?」 「はい…」 怒られた子どものようにシュンとする圭介。 これはいつもの流れだ。 「…ご飯作りますが食べますか?」 「はい!」 (元気じゃん…) 「じゃあ待っててください。とりあえず水は飲んでくださいね」 「ありがとう。助かります」
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