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廊下に出て隣の部屋のインターホンを押す。
誰と確認することもなくドアが開いた。
「本当に作って来てくれたの…」
「はい、別に嘘なんてつきませんよ」
驚いた顔にふと笑みがこぼれる。
「ありがとう。マジで助かる」
「いえ。食べられなかったら残しても気にしないので無理しないでください」
「いやいや!こんな美味しそうなの残すわけないでしょ!…腹減った…早速食べてもいい?」
「はい。食べたらドアの前にでもお皿置いておいてください。私もう寝るので」
「うん。わかった。ありがとう。」
「おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
必要最低限のことを伝えて部屋に戻る。
(『上がっていってよ』とか言う人じゃなくて良かった)
一人が長かったこともあり一応警戒心はある。
(いや、その前に名前聞いてないわ…まあいいか)
今日は一日の終わりにドッと疲れた。
さっさとシャワーを浴びてベッドに入る。
さっき作ったおかずの残りは自分の明日の晩ご飯にしようと考えつつ京香は眠りについた。
次の日。今日は学校の夏期講座があるので昨日より少し早めに起きた。
歯を磨いているとドアの外からコトっと音がした。
口をゆすいでそっとドアを開けると足元にキレイに洗われたお皿とメモとペットボトルのお茶が置いてあった。
『ご飯ご馳走様。めっっっちゃ美味しかったです。お水もありがとう。202号室 琴吹圭介』
メモにはそう書かれていた。
「ふっ…律儀な人…」
『めっっっちゃ』にウケてしまった。
文字で人の性格がわかるわけではないが、メモを見てなんとなく悪い人じゃないんだろうなと京香は思った。
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