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夫は毎晩七時になると家に帰ってきて窮屈だ。
気を遣って食事もちゃんと作らなくちゃいけないし、掃除も一応はしなければならない。よくわからない仕事の愚痴も聞かなくてはならない。
それに一番はあの女の顔がチラついて不快感がつのる。
お腹の子の為に少しでもストレスを溜めたくない。
翌日、久しぶりに私から母さんに連絡した。
最初は母さんは困惑していたが、遠太郎さんの浮気を告げるとすぐに離婚に賛成してくれた。
「浮気する男なんていらん、すぐ秋田に戻って来なさい」
母性本能溢れるその言葉に甘えることにした。
お母さんも離婚しているだけあり、私も母も離婚のハードルは他の人と比べるとかなり低い。
「元気に産まれるといいね」
母さんの言葉にまた愛情が溢れてくる、愛おしくお腹をさする。
昼食を食べた後、区役所に行き離婚届を貰った。
遠太郎さんが帰ってくるまでに自分の荷物をまとめようと思ったが、自分の荷物は衣類ぐらいしかなかった。
私が欲しいものは一つも買っていない。
私は結婚生活に何を望んでいたのだろう。結婚生活の一年半を思い虚しくなった。
その時だった。
「ただいま」
玄関のドアが開く音がし遠太郎さんが帰ってきた。
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