私の全てはあなた

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夫は大きな鞄を抱えている私を見てこう言った。 「何で鞄持ってるの?」 笑顔でこう答えた。 「そろそろ離婚しようと思って」 夫は何故か怒っている。 「離婚って言ったって、これから子供も産まれてくるのにどうするつもりなんだ?」 「お母さんが浮気する夫は必要はないから、実家に帰ってきてもいいって」 夫はそれ以上何も言わずに唖然と私を見つめている。ここで具体的な条件をつきつけた。 浮気の慰謝料として二百万、財産分与で三百万、出産後親子であることを鑑定し、養育費毎月十万円、半分高校と大学の学費は随時払って貰う。面会権に制限はつけない。 本人も高級取りだし、ご実家から受け継いでいる資産もある。決して無茶な額では無い。 ところが夫はこれを拒絶した、理解に苦しむ。 物分かりの良いふりをして離婚を勧める。 「これだけ払えば人生やり直せるよ、今度こそ本当に好きな人と一緒になって」 夫は謝ってきた。 「本当に今まですまなかった、離婚だけは止めてくれ」 「何で離婚したくないの?仕事に支障が出るから?」 夫は青い顔をしている。 「仕事は関係ない、俺は梨花を好きだと思ったから結婚したんだ」 私にもまだ夫に少しは情が残っていたようだ。涙が頬を伝った。持っていた鞄を夫めがけて投げた。 「……だったら何で浮気なんかしたの?……何で家に帰って来なかったの?」 「本当にすまなかった、結婚した時に何があっても俺を支える為に生きていくって言ってくれたから、それに甘えてた」 その瞬間、胎動を感じた。我が子にまた愛しさがあふれる。 「私は昔はあなたなしでは生きていけなかったけれど、今はこの子がいればそれでいいの」 淡々とそう告げた、私の心からの言葉だった。
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