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夫の遠太郎さんと出会ったのは派遣社員仲間が開いた飲み会だった。
遠太郎さんは三人集まった男性陣のなかで群を抜いて格好良かった。身長も高く着ている衣類も私が好きなブランド物で固めている、勤めている会社は超有名企業、彼の全てが好みだった。
この人と付き合いたい、結婚したい、何をしてでも。
本能が疼く
運良く彼も私を気に入ってくれたようで熱心な私のアプローチで付き合いが始まった。
とにかく彼に嫌われないように必死だった。
案の定、素敵な彼には女の影がチラチラする、その女達に負けないように彼に尽くした。
彼の部屋の掃除は勿論、食事も作ったし、洗濯もしていた。
彼に呼ばれたら友達をほっぽり出してすぐに駆けつける。
そして一年後、私は彼から指環をもらった。
あの時の充足感、高揚した気持ちは一生忘れない。
私が選ばれたのだ、他の女に勝ったのだ。
けれど実際は幸せに満ち溢れた生活とは程遠い。
常に女の影がチラチラし、彼は帰りが遅く碌な会話もない。
専業主婦として、完璧を尽くしていたが彼は興味がなさそうだった。
夫が何も言わなくても全てを用意し、笑顔を向け、私の全ての愛情を夫に注いでいた。
私の全ては夫だった。
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