私の全てはあなた

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季節は変わり厚手のコートをクローゼットにしまった。 長かった冬が終わりを告げ春がやってきたのだ。 それなのに相変わらず夫は家に帰って来ない。 絶望的な気分で毎日を過ごす、専業主婦なんて家族がいなければ何のための仕事なのだろうか。 遠太郎さんは仕事上離婚しようとは言わないだろう。 勤務先が古臭い企業体質で浮気とか不倫した社員は出世街道から外されるのだ。 となると私は一生この孤独に耐えて生きていかなければならないのだろうか。 私は何の為に生きているのだろうか。 その日の夜のことだった。 どうにもこうにも気分が優れない。 暇を持て余してるのもあり翌日すぐにかかりつけの内科に行った。 医者から驚くことを告げられた。 「妊娠してますね」 青天の霹靂、三ヶ月前にそういえば一度だけ酔って帰ってきた夫と関係を持った。 帰り道、春風に吹かれながらもお腹をさすると愛おしい。 今までは旦那が世界で一番愛おしかったが、今はそうではない。 この子が一番愛おしい、母性本能が次から次へと枯れることなく溢れてくる。 その夜、初めて旦那に電話をするのをやめた。
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