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19.エピローグーミスターー
今日は午前中が外来で、午後から縦隔腫瘍のオペが一件か。
第一助手は鹿之助。緊張しているだろうな、フォローしようと考えながら歩いていると、
「君島先生っ。」
大音量で声をかけられる。
「ああ、寺田、おはよう。」
「おはようございます。」
どうやら走ってきたらしく、寺田が息せき切っている。
「どうした、何かあったのか?」
「どうしたもこうしたも。先生、まだ見てないんすか?」
「何だかわからないけど、きっと見てないと思うよ。どうした?」
僕は笑いながら言った。寺田と話すと、いつでも何だか楽しくなってしまう。
「SNSですよ、今朝上がったばかりの。」
「ああ、病院関連の。お前、よくチェックしてるよね。」
「はい。そりゃもう。」
「そうなの?それで何か大変なことが起きたのか?」
寺田は忙しく携帯の画面を操作して、僕の鼻先に突きつけた。そこには、何と、今まで見たこともないような幸せそうな微笑みで、隣にいる女性に耳を傾ける、我らが統括部長の顔のアップがあった。
「近いよ、寺田、部長が近すぎる。」
僕は画面から顔を少し離した。そこでやっと見出し(というのか?いつものやつ)が目に入った。
“ミスター、(ようやく)陥落”
僕は笑った、心の底から。今日の仕事は全て上手くいくような、晴れ晴れとした気持ちになった。
(→スター特典「決着」へと続きます。)
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