第二章-1話-

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扉を開くとそこには視界いっぱいの蒼。 「あれ…いない?」 絶対ここにいると思ったんだけどな…なんて思いながら辺りを見渡すと、ベンチに何やら深紫の物体が。 「寝てるし…」 そこにはすやすやと気持ちよさそうに眠る赤羽の姿。 話し相手は寝てしまっていて暇なので、しゃがんで少し観察してみることにした。 少し長い紫の髪が目元に少しかかっている。前髪をさらっ…と流すと伏せられた瞼が現れた。 「やっぱり美形だなぁ…」 普段は割と何を考えているのかよく分からない時が多いが、こうして改めて見てみると、少しあどけなさをも感じさせる。 寝顔を見る機会なんてそうそうないので、まぁせっかくだし、とぼーっと眺めていると、瞼がピクっと動いた。 「赤羽?起きたの?」 声をかけると徐々に目が開いていく。太陽の明るさに慣れないのか何度かぱちぱちと瞬きをしている。 「…なんでいるの」 と、少し寝ぼけたような声で言うので 「かばん、教室に置きっぱなしだったからまだいるかなって」 はい、とカバンを見せた。 「…ありがと」 欠伸をしながら起き上がる赤羽の横に腰掛けると、肩に重みが。 「……」 無言で頭をぐりぐりと押し付けてくる。地味に痛い。 「まだねむいの?」 「ん〜……」
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