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酔い潰れ
すぅー。
冷たすぎる外気を身に感じる。
既に人気のない暗闇な公園のベンチで俺は独り。厚着のジャンバーに首を縮め寒さから隠れる。そして、何本目なのかわからないタバコを吸っている。
煙が口から肺に渡る感覚。
そんな瞬間が堪らなく心地いい。
しかし、体に悪いことは既に理解していて、自分にとって害なこともわかってる。そんな事のせいで気分が曇る。
これは、世界のせいだ。
タバコを辞められないのはこの世界がこんなものを作ったからで、タバコという形も定義も、理由も意味も。
世界が決めたのが悪いだろう。
不満や文句を溜めた息を吐くように、白い煙を吐き出せば、この世界が一つ汚れる。
そんなことも、悪いのはぜんぶこの世界だ。
こんな考えをしだすのは決して憂鬱だからでは無く、その逆だ。
何時しか作曲家を目指して、何時しか会いたい存在を目指した。
そんな数年間がようやく報われるというのだから、気分が上がるのも真面だろう。
高校は2年目で中退し、進みたいものへと真っ直ぐに進む為、家族を利用し、金を利用し、友達を裏切ってきた。
幾度人の道を外れたかなんて覚えてはいない。ただ、今こうして幸せを感じられるのはどうしてか。
そうだ、何時か言っていた。
「幸せになりなさい」
そんな親の言葉、世界の言葉が味方してくれてるからだ。
どうしてここまで、成功者に優しい世界なんだろうか。
「はぁー、うける」
笑いが肺から出る感覚も心地がいい。
明日に俺は会う。
俺が信じてきた人達と会う。
夢がまた一つ叶う。
そう言えば、俺の夢はあと何個だっけか。
「わっすれたな」
数年前に思い描いた夢の数なんて分かる訳もなく。
悪に塗れたように、それとも黒に塗られたように笑う俺の姿なんて、誰も見てはいない。
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