墜ちる、花火

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「またか…」 冷えた手を擦り合わせ呟く。 いま僕はどういう顔をしているだろうか? 怒りや嘆き、悲しみと憎しみ。 複雑な感情が血と共に身体を巡る。 言いたいことはもっとあった、感情的になったってよかった。 でもその一言を絞ると喉は固唾さえ通さなくなる。 花火が上がっているから来て、と彼女から連絡があって久しぶりに足を踏み入れた空気の悪い1Kの部屋はまるで空き巣が入った直後のように荒れ果てていた。 几帳面な彼女がクローゼットにしまったはずの夏服も冬服も、引き出しごと床にぐちゃぐちゃと混じりきって、あらゆるものがひっくり返っている。 「やっときた。花火、きれいだよ」 地獄をも思わせる薄暗い部屋の奥で振り向く彼女の憎たらしい笑顔もきれいだ。
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