墜ちる、花火

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僕はそのかわいい顔を向けられるだけで なんだって許してしまいそうになる。 実際、このありさまである。 「見ないの?花火。入りなよ。」 彼女は再奥の大きな出窓に腰掛けていた。 玄関で呆然と立ち尽くしていた僕は恐る恐る踏み場のない部屋に足を置く。 ああ、なんでこうなってしまうんだろう。 僕がいるだけでいいと期待させる事を言うくせにいつだって突き放すように裏切り、僕を傷つけ、感情を揺さぶる。 全身が心臓になったようだ。 手足も上手く動かないし、呼吸もままならない。 声が震えないように、動揺が伝わらないように、出来るだけ深く息を吐き余裕のある自分をつくる。こういう時は目を見ないがいいんだっけ、いやそれは野生の動物の場合だったかもしれない。 でも、目の前にいる彼女に理性があるかなんて、 誰かに判断できるのだろうか。
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