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狙いを定め・・・
鳥の囀り、陽の光り、そして優しく寄り添う薫風が骨身に染みる。
あぁなんて清々しい朝なんだろう・・・まぁこれが公園のベンチでなければの話だが。
さて、先ずは顔でも洗うとしよう!
俺は公園内にある立形水飲水栓へ赴き、今にも朽ち果てそうな蛇口を掴むと反時計回しでそれをひねってみせる。すると、混濁した液体が勢いよく吹き出し、辺り一面を瞬く間に茶色へと染め上げた。
そうこうしてる間に、なにやら遠くの方で子供と思われる声が一つ、二つ、三つ・・・と聞こえてくる。
俺はその声のする方へと足音を忍ばせながら近付いてみると、なんとそこには色とりどりのランドセルを背負った集団登校の子供達が綺麗な一列で歩いている。
しかし、その子供達に目を凝らしてみたものの、肝心な哲雄君の姿は見当たらない。
どうやらこの登校班ではなさそうだ・・・そう思ったのも束の間、その列の後ろの方から見覚えのある顔が二つ、仲良さげに、更には手を繋ぎながら歩いてくるではないか!
それは紛れもなくいつかさんと哲雄君であり、あたかも朝っぱらからラブラブモードをフルに見せつけているかのようだ。
いつかさんがいるってことは、一花さんも一緒にいるのでは?と思ったが・・・確か一花さんは保育園児である二三さんを保育園に送り届けてから登校していたってことを直ぐに思い出し、一人孤独に納得する。
更にこの時、仲睦まじい二人の背中を静かに見送ることしかできなかった俺の頭ん中では、哲雄君が一人でいる時間帯はそうそう訪れるものではないだろうという結論に至り、任務遂行の為にはやはり何かしらの策を練らねばならない、そう考えたのである。そして長期戦になるのを覚悟した上で再び公園内のベンチへと戻ると、自分にしか見えない陣を張り巡らせ一人瞑想に浸るのであった。
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