役者、侑人と仕事がしたいっ!

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「ちょうどよかった。うちの役者が出演するんだ。良かったら一緒に行こう」  中川と名乗ったその男は手に持っていた紙袋から弟が持っているグッズと同じ8頭身の猫のヒーロー描かれたチラシを出し歩きながら説明してくれた。  チラシの裏に乗っている役者の名前を数人指をさし、「この子たちがうちの事務所の子なんだよ」と説明をしてくれたものの、顔と名前に聞き覚えはない。  弟もメインどころの何人かには興味を示していたが、役者には興味がなくただ中川と名乗る男とにゃんこ戦隊についてお話をしている感じだった。 「お兄さんは背も高くて見た目もかっこいいし、役者に向いていると思うけどなぁ」  本気か冗談か分からないことを言い出す中川に陽輔は興味なさげに首を横に振った。  大学でもモデルになれるのではないかと噂をされたこともあったような気もするが、考えたことも無かった。  ただ大学を卒業したら、安定した職に就き適当に結婚し幸せに過ごせればいいなと考えていると、見慣れたポスターが張り出された小さな劇場前についていた。 「もう開場はしていると思うから中に入って大丈夫じゃないかな?僕はこっちの方から入るから。」  中川は別れの挨拶をすると他の観客が並ぶ列から離れ、案内係の人に挨拶をすると奥の別の入り口の方へ消えていった。  胡散臭い男だとは思っていたが、関係者というのは嘘ではないようだ。
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