役者、侑人と仕事がしたいっ!

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 客の入りもまばらな会場は指定ではなく、好きなところに座れるようだ。  陽輔のような平均よりも背の高い人間は、何かを見に行くときに不便だ。  映画なんかうっかり前の方の席を取ってしまえば後ろで舌打ちされることすらあるため、出来るだけ後ろでひっそりと座っていたいと思っているのだが、弟が前の席がいいと言い出したので、後ろに人がいないことを念入りに確認し通路近くの隅に座ることにした。  周りを見渡すと子どもも何人もいるが大人だけの観客も多い。  仕事から抜けてきたようなスーツを着た男性、原宿にいそうなゴスロリのドレスのような服を着た長身の女性、ブレザーを着た高校生ぐらいの男の子もいる。  小さな子どもや保護者だけでなく一人で見に来る大人……一部は学生だが、こうも何人もいるとは驚く。  上映時間が近づくと館内に注意事項を説明する女性のアナウンスが響き、照明が少しずつ暗くなり、舞台以外の明かりが消えた。  幕が上がると目の前の画面に軽快な音楽と、アニメの映像が流れ、ヒーローたちが飛び出していく。  陽輔はアニメすら見たことなかったので、2次元から3次元に違和感なく変換される演出はすごいと思ったもの、それ以上の感動はなくヒーローたちがそれぞれ戦ってははけていく姿をただ茫然と眺めることしかできなかった。   オープニングに合わせコスプレ集団が真面目な顔で踊るのを見ている内に陽輔は少し眠気に襲われた。
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