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「ちょっと!ウサビロコウくぅーん!やーめーなーよー!」
……が、あと一歩のところでウサビロコウは茶色の服を着た背の高い男に腕を引っ張られ、情けない声を上げてひっくり返った。
その見事なこけっぷりに会場に笑いが起こる。
弟も先ほどの不安な雰囲気はどこへやら、楽しそうに笑っている声がした。
時間にすれば些細なやり取りだった。
だが、陽輔はウサビロコウに睨みつけられたあの一瞬でこの世界に囚われ、目を離すことが出来なくなった。
―――今の人、何者なんだ
メインのヒーローたちなんか気にもならず、ものの数回しか出てこなかったウサビロコウを探す。
赤い目が陽輔を見つめることはその後なかったが、どうしてもあの視線を忘れることが出来なかった。
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