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「謎解きを、もうひとつ。ここの兎達は、私が蘇らせました。」
(馬鹿な──!)
「馬鹿なと思うでしょう? だが、事実です。」
心の裡をズバリと言い当てられて、啓太の心臓が大きく跳ねた。男の話は荒唐無稽で、とても現実の事とは思えない──だが。目の前の光景が、全ての常識を裏切っていた。
のろのろと緩慢な動きを繰り返す兎達は、まるで何事も無かったかのように、飼育小屋の中を歩き回っている。勿論、怪我をしている様子も見られない。
(何故だ、確かに見たのに?)
ひたすら混乱する青年に、男は含み笑いを込めて言う。
「考えた事はありませんか? 死んだ命を、もう一度呼び戻す魔法があったら──と。大切な人、大切なペットと死別した時…もう一度だけ会いたいと、神仏に懇願したことは?」
「………」
「私には、それが出来ます。」
「!!!」
「貴方の様な常人には、滑稽な御伽噺の様に聞こえるでしょう。ですが、私にはそれが可能なのです。無理に信じていただく必要はございません。ただ、今あなたがが視ているこの現象を、唯一説明できるのは、この私だという事だけ申し上げておきましょう。」
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