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回りくどい物言いが、妙に癇に障った。
啓太の思考は混乱を極め、縛された体は、徐々に力を失くしてゆく。
(この男は一体誰だ⁇ 何の目的で、こんな事をする?)
なぜ? なぜ? なぜ?
胸に湧き上がる無数の疑問。言い知れぬ不快感。 男が発する忌まわしい気配に、心はどんどん追い詰められる。それを知ってか、声の主は、ますます誇張した言い回しで語り始めた。
「では、最後の謎解きです。貴方が視ているこの光景は、全てが真実ではありません。今から、私が行った『死の魔法』の種明かしを致しましょう。」
言い終わらぬうちに、世界は暗転した。啓太の視界が、飴の様に溶けて崩れ去る。
ぐにゃりと歪む空間。
強い眩暈と、船酔いの様な嘔吐感。
立っている事も儘ならず、啓太はとうとうその場に頽れる。前のめりに倒れるや、咄嗟に金網を掴んで体を支えた。
男は、そんな啓太を嘲笑う様に言う。
「御覧なさい。これが、彼等の真実の姿です。」
「──???」
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