【八】白の革命。

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「出ないな、留守じゃないのか?」  ドア一枚隔てた向こうで、男の一人が呟く。青白い顔で、長い髪を後ろに束ねた、痩身の男だ。  すると、隣にいたもう一人が、小さく舌打ちをして言った。 「そんな筈はない。あの子供を見張る為に、わざわざ式神(しき)を憑けておいたのだ。この中にいるのは間違いない。貴様は、この仕事が面倒なだけなんだろう──陽?」  『陽』と呼ばれた痩躯の男は、陰鬱に溜息を吐いて答えた。 「貴様はどうなんだ、陰? 禊さまは、もう充分な数の稚児を(かこ)っているではないか。この上、まだ増やすとは…あの方の好色にも困ったものだ。」 「そう言うな。私も興味があるのだ、あの少年に。知っているか? あれは、白児(はく)と呼ばれる者だ。生まれながらに、強い行力を持つという…」  言葉の最後の方は、まるで独り言の様であった。 『陰』と呼ばれた男の瞳の奥底には、(くら)い欲望が蠢いている。 「何としても連れて来いとの御命令だ。…行くぞ、陽。」
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