118人が本棚に入れています
本棚に追加
一方。雪白は、身を隠す場所を探して右往左往していた。感覚で解る、あの男たちは『悪者』だ。逃げなければ…また何処かに連れていかれて、酷い目に合うに違いない。
啓太が帰って来るまで、何処かに身を顰めていようと思うのに、見慣れたアパートの部屋には、上手い隠れ場所が見付からなかった。
クローゼットの中、トイレ、テーブルの下…
潜り込み、息を顰めてみたが、何処も完璧な避難場所とは言えない。狭い場所に逃げ込めば、スラリと伸びた四肢がそれを邪魔する。
いつの間に、こんなに体が成長していたのだろう?
毎日適切な栄養を与えられた少年の肉体は、漸く正常な発育の兆しを見せ始めていた。以前より扱いにくくなった手足を縮めて、あらゆる場所に隠れてみる──だが。
この時、雪白は、まだ自分のミスに気付いていなかった。
啓太の留守中は、ドアの施錠を忘れてはいけないと──あれ程言い聞かされていたにも関わらず、うっかりとそれを忘れていたのである。
果たして。
鉄製のドアは、二人の闖入者によって、難無く開け放たれた。どかどかと物騒な足音と共に、部屋中が踏み荒らされる。雪白は、慌ててベッドの下に潜り込んだ。
(来ないで。こっちに来ないで!)
神だの仏だの…そんなものは信じた事が無い。
自分が祭司として祀り上げられていた時でさえ、そんな不確かな存在を、心から信じていた訳ではなかった。
だが──願ってしまう。
(助けて、啓太!)
最初のコメントを投稿しよう!