Epilogue

2/8
前へ
/168ページ
次へ
 白い天井と白い壁。 消毒された清潔な部屋で、啓太は目覚めた。 覚醒したばかりの意識は朦朧としていて、上手く思考が回らない。まるで脳に鉛を埋め込まれたように、重く怠く、青年の知覚を淀ませていた。 「ここは…どこだ?」  虚しく消える独り言は、掠れて音にならない。 ぼやける視界が、ゆっくりと焦点を結ぶと──啓太は、漸く自分が置かれた場所を理解した。 「病院…?」  腕に刺さった点滴のカテーテル。 天井から床までを覆うカーテンが、ベッドの周囲をぐるりと囲んでいる。どうやらこの部屋には、自分の他に、数名の入院患者がいるらしい。先程から、絶えず微かな物音が聞こえていた。 「………。」  テレビ台のデジタル時計は、AM10:23を表示している。だが、日付が解らない。置かれたままの薬とコップ。ぼんやりと灯る照明。頭上には、山城啓太と書かれた名札が掲げられていた。  啓太は、両腕に力を込め、ゆっくりと上体を起こす。その途端、 「痛っ──!」  鋭い痛みが走って、思わず頭を抱えた。 頭蓋にぐるぐると巻かれた包帯に気付いて、自分が大怪我をしている事に気付く。この怪我は、一体…?
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加