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「…この部屋のものは、ほとんどが兄の遺品なんです」
「あの本棚も?」
「はい。高校野球を題材にした漫画は、おれが勝手に増やしたりしましたけど、ボブルヘッドも、兄のものです」
お兄さんを模したそれは、球場に来場した特典として配布されたものだったらしい。その記念にいただいたものを、こうして飾っていたという。
たしかに、言われてみれば、ミハルくんにも似ている気がする。
「…そっか。お兄さん、すごく野球がすきだったんだね」
「そうなんです。弟のおれが野球に興味持たなくなるくらい」
「えっ、そうなの?」
「まぁ、多少のルールはわかりますし、兄が出てた試合はそこそこ見ましたし、野球漫画も有名なものくらいは読みましたよ。でも、その程度で……だから、うれしかったんです。お姉さんが関心持ってくれたの」
ーーーそうか。わたしを受け入れてくれたいちばんの理由は、ミハルくんのコンプレックスなお兄さんのことを含めて、わたしが受け入れてくれたと思ったからなんだ。
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