彼の正体

6/7
93人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
「…この部屋のものは、ほとんどが兄の遺品なんです」 「あの本棚も?」 「はい。高校野球を題材にした漫画は、おれが勝手に増やしたりしましたけど、ボブルヘッドも、兄のものです」 お兄さんを模したそれは、球場に来場した特典として配布されたものだったらしい。その記念にいただいたものを、こうして飾っていたという。 たしかに、言われてみれば、ミハルくんにも似ている気がする。 「…そっか。お兄さん、すごく野球がすきだったんだね」 「そうなんです。弟のおれが野球に興味持たなくなるくらい」 「えっ、そうなの?」 「まぁ、多少のルールはわかりますし、兄が出てた試合はそこそこ見ましたし、野球漫画も有名なものくらいは読みましたよ。でも、その程度で……だから、うれしかったんです。お姉さんが関心持ってくれたの」 ーーーそうか。わたしを受け入れてくれたいちばんの理由は、ミハルくんのコンプレックスなお兄さんのことを含めて、わたしが受け入れてくれたと思ったからなんだ。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!