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怪獣のブックエンド1
「あーーだりーー」
ふやけきったあくびを一発かます。
ダチと馬鹿騒ぎを終えて白けた帰り道、夜明け前の路上にはカラスの群れが舞い降りて生ごみを啄んでいる。
ズボンの尻ポケットに突っこんだスマホが震える。
「げ」
手に取ってチェックすりゃ親からメールが届いていた。
内容は見なくてもわかる。予感的中、そこには『まだ帰らないの』『連絡くらい入れなさい』『明日の学校はどうするの』と既読スルーしたくなる説教がくどくど書き連ねられていた。
思わず舌打ちが出る。
「うっぜえ」
学校は行く気がしない。サボるか。
教師だってどうせ俺みたいな落ちこぼれ見放してる、せいぜい真面目にやってる奴の邪魔をするなよと遠回しに釘をさされるだけだ。
土台俺の偏差値で行ける大学なんてねえし、中高6年通してさんざん馬鹿やらかしたんで内申だって惨憺たるものだ。
「うち帰ってひと眠りすっか……」
時間は朝4時、周囲には薄青い闇がたちこめている。夜明け前とあって人通りもなく、閑静な住宅街には透明な静寂が漂っている。
「ん?」
ポケットに手を突っ込んでぐうたら歩いていた時、ある物が目に入る。
アスファルトを打った道の先、住宅街のゴミ捨て場。そこに場違いな物が捨てられていた。
目をしばたたく。次に擦ってみる。俺はポケットに指をひっかけたまま、ゴミ捨て場の前にしゃがみこんでまじまじとそれを見直す。
「ゴミ捨て場にあるってこたァゴミ……だよな?」
語尾に疑問符が付くのは、それが小学生が夏休みの自由研究で作るような、図工の工作だったからだ。
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