駅で寝る

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 美裕が好きな洋服のショップに着く。大きなガラス窓の中には色とりどりの冬物がハンガーに掛かっていたり畳んであったりしている。美裕はクリーム色のギャザースカートを買った。  時間が出来たので派出所へ行った。財布を落とした届け出を出したことを言うと「まだ見つかってませんね」と言われた。仕方がない。諦めるか。  スタバに行ってキャラメルフラペチーノを注文した。席に座ってスマホを見ようとしたときに隣の若い男の子がヴィヴィアンウエストウッドの黒い財布を持っていた。まさか。美裕は財布を凝視する。男の子が何気に開いた二つ折りの財布のカード入れに美裕が行った病院の診察券が見えた。  間違いない。  美裕は声を掛けようか躊躇ったがそんな勇気はない。スマホで妹にラインを送った。 『智花、今落とした財布を持ってる子を見付けたんだけどどうしたらいい?なんか自分の物のように使ってるの』 『えっ、それどうしたんですか?って訊いてみたら?』 『そんなこと言えないよー』 『じゃあ、財布のこと言わないで声を掛けてみなよ』  そうか、その手があったか。美裕は知りあいを装ってニコニコしながら近づいてみた。
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