駅で寝る

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 高校生っていうのは行き当たりばったりなところがある。目的のバンドの音楽さえ聴ければ後は運に任せてしまう。今日だってライブが始まる前に財布がないのに気付いたがまあいいやと思った。ライブのチケットは財布と別に持っていた。ライブさえ見れれば目的達成だ。だから十二時を過ぎても皆んなのノリに乗ってしまっていた。地元までの終電はないかもしれないが大宮駅にさえ着けば駅で寝ればいい。そうライブが終わったときに考えた。一応渋谷駅の近くの派出所に財布の落としものはなかったか訊いたのだが、ヴィヴィアンウエストウッドの黒い財布は届けられてなかった。財布がないってことはマックに行けないってことだ。  終電がすべて行ってしまった後の駅は寂しい。しんと静まり返っている。美裕は青いロッカーが並ぶ前で眠りの糸口を掴んだ。 「君、こんなところで何してんの?」  声を掛けられてハッと起きる。駅員か警察かと思ったら若い男の子だ。美裕と同じ年くらいだろう。
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