駅で寝る

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「始発まで寝るの」 「へえ、若い女の子が危ないよ。僕が付いててやろうか?」  この子はいったい何者なんだろう。ナンパだったらお断りだが悪気がなさそうだ。くりくりとした可愛い目。触ると柔らかそうな栗色の髪。美裕は若い男の子にこんな姿を見られたことが恥ずかしくなった。 「私は一人で大丈夫。それよりどっか行ってよ」 「やだよ、さっきからあの外国の人が君を狙ってる。襲われたらどうするんだよ」  男の子の視線の先には体格のいい黒人が居る。でもいくら人が少なくても襲ったりなんかしないだろう。美裕はそう思ってプルプルと首を振った。 「私、眠いから」 「うん、うん、僕が横に座っててあげる。あ、僕の名前は金狐(きんぎつね)」  えっ?変わった名前だな。美裕は首を捻る。そういえばライブハウスに行く途中に小さなお稲荷さんがあって金色の狐の置物があった。この子とは関係ないと思うが思い出してしまう。  美裕はまた横になる。金狐は膝を抱えて体育座りをしている。カーキ色のジャケットに黒いチノパン。そこら辺にいる普通の男子だ。見た目がとても良いのがドキドキもんだけど。
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