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美裕をチラチラ見ていた黒人は西口の方へ歩いて行った。美裕がいるのは東口。金狐が言うように本当に美裕を狙っていたのかもしれない。
イケメンが体温さえも伝わりそうな距離で座っているから眠ることが出来ない。美裕は起き上がる。リュックからスマホを出して時間を見ると三時だった。
「金狐さん、黒人が居なくなったからもう大丈夫だよ」
「うん、だけど、僕が付いててあげる方が安心だよ。それに恩返しもしなくちゃいけない」
「恩返しって?」
「今日僕を綺麗にしてくれただろう」
お稲荷さんの横を通り掛かったとき金色の狐の置物が鳥の糞で汚れていたのでウエットティッシュで拭き取ってあげた。その後に時間があったのでお参りをした。
「もしかしてあの置物が君?」
「そうだよ。僕は妖なんだ」
美裕は仰天した。だがこの子が嘘を言っている可能性がある。お稲荷さんはライブハウスの近くだったし、ライブハウスには若い子がいっぱい居た。その中の一人かもしれない。でも美裕を騙したってこの子は何も得をしないだろう。謎が多すぎる。まず妖がどうやってここに来たんだろう。
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