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デュラはんの頭は土で汚れていて激戦を予想させた。
「ボニたん! やっつけたよ! めっちゃでかかった。皮高いんよね? でもこれゴワゴワして獣臭い。これでええんかな」
「皮なんてどうでもいい。あとで聖水できれいに頭洗ってあげるね」
「ほんまに!? やった! ひゃっふぅ! 自分で洗たら指がシュワシュワして変な感じやねん」
どうでもいいと言ったけど、改めて広げられた皮を見る。戦慄する巨大さ。デュラハンは鞭しか使えないはずだけどどうやったんだ?
村はその皮でお祭り騒ぎになった。こんな見事なヘルグリズリーの皮なんで国宝級だ。しかも損傷は軽微。頭部、それから胸部と背中に少しくらいで乏しく、とても綺麗な状態。
うまく貴族の賄賂にでも使えると良いのだけど。
ああ、でも本当に帰ってきてくれてよかった。しかも勝って帰ってきてくれた。少なくとも村人が追っ手を追い払いつつ逃亡することはできそうだ。
教会の隅の洗い場で気持ちよさそうに鼻歌を歌うデュラはんの頭を洗いながらどうやって倒したのか聞いたけど、驚きの連続だった。
どうしてそんな発想ができるんだろう。確かに素振りで体を鍛えるためとか、武器として使わなければ適性がなくても剣や槍を持つことはできる。でもそれを罠に使うという発想はない。
だからぼくらはスキルのある技術をひたすら学ぶ。
「みんな頭固すぎるねん」
「デュラはんにはそうなのかもしれないけど」
「あ、もちょっと右のほうかいて? そうそう、あぁ~至福~。一仕事終えた感~。」
かなわないな、もう。
奇麗に泡を落として清潔な布で拭いて櫛を通す。黒衣の体はその辺に腰かけてぼんやりしている。
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