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1 @夏流
心の形が見えればいいのに。
そう考えてすぐに、いや、もし見えてしまったら困るか……と、思い直す。
夏流は隣りに眠る友人の顔を眺めていた。
一度寝てしまえばちょっとやそっとの事では起きる事はない。
しっかり寝ているからこそできる事だった。
そっと髪に触れてみる。
細く柔らかい髪が気持ちいい。
この友人とは大学に入ってから知り合って、最初は四,五人で集まって遊んでいた。
それからふたりだけで遊ぶ事が増えていった。
昔からの友人のように妙に気が合ったのだ。
よく観るテレビ番組や漫画や音楽、服装なんかも好みが同じで。
訊いた事はないけれど、好きな人の好みも同じ、だというなら友人が夏流を恋愛として好きなはずはなかった。
ふたりは正反対だったから。
夏流が好きなのは自分とは正反対の友人で、友人はきっと友人と同じタイプを好きなんだと思う。
こんな風に友人が夏流の隣りで眠っているのは、たんに飲み会の帰りに終電を逃しただけの話。
たとえ毎週末であってもそれはただの便利な宿として利用しているだけのこと。
夏流の方に特別な感情があったとしても何も関係はない。
この関係を維持する事の方が大切なのだ。
どうかこの気持ちを友人に気づかれませんように……。
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