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――ごめん、寿命を操作することはできないんだ。
そもそも俺には、人の願いを叶えるような力などない。
そんな力があったら、苦しむ人々をとっくに救っている。
でも人々は、古くから言い伝えられてきた神話を信じ、全国各地の神社に神々を祀り、崇めている。
この神社にも多くの人々がやってきては俺を頼ろうとする。俺にすがろうとする。
どんだけ身体を鍛えても精神を集中させて念じても、目の前の塵すら動かすことができない、こんな非力な俺に……
困っている人間、弱っている人間を助けることができるのは、人間しかいない。
俺を崇めるくらいなら、自らを犠牲にしてでも誰かを助けようとする人たちのことを敬ってほしい。
得体の知れない疫病に侵される恐怖と闘いながら、感染者を必死で救う人々に感謝してほしい。
救世主は皆のもっとそばにいる。
俺は深くため息をついた。
――それじゃあ俺は何のためにここにいるんだろう……
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