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帰宅
楽しかった青空との買い物も終わり、私は青空をだっこしながら帰ってきた。ドアは使用人の春乃に開けてもらい、中に入った。
「ただいまー。」
まるで帰る時間を知っていたかのように染山が私たちを出迎えた。
「奥様、青空様、お帰りなさいませ。……それにしても奥様?随分とお早いお帰りですね?」
と、染山は不思議そうに言った。
……なーんだ、偶々なわけか。
私は、自分の勘違いに少し笑いながら、だっこしている青空の顔を染山に見せる。
「あら?…ふふっ。そういうことですか。」
そうなのだ。青空はかなり疲れたみたいで、帰りの車の中で寝てしまったのだった。
本当は起こさないといけないんだろうな。
……でも、青空の寝顔がかわいくて、起こせなかったのだ。
それに急ぎの用件も無いし、このままでもいいか、と思ったのだ。
車を降りるとき、春乃が青空をだっこしようとしたが、私はそれを断り青空をだっこして家に帰ってきた。
染山は幸せそうに寝ている青空と、私を交互に見て、にこにこしながら微笑み、
「よかったですね。」
と、一言、小声で静かに言った。
私は、青空を寝室に寝かせてから、春乃に、
「起きたら呼んで。仕事部屋にいるから。」
と、伝えた。春乃は朗らかに微笑みながら、
「承知しましたわ。」
と、言った。そして、私は仕事部屋へと向かった。
中に入ると染山と、二人の大人が私を待ち構えていた。
染山は遅れてきた私の代わりに二人をお茶で、もてなしてくれていたようだ。二人はお茶を飲みながら和やかな時間を過ごしていたが、私が中に入った瞬間空気が変わった。私は、深呼吸をして、一礼し、
「お待たせして申し訳あり……」
と、私が遅れた来た詫びを言い終わる前に、二人がこちらに突進し、ぎゅーっと、私を抱き締めた。
「優ーー!元気だったかー!?」
と笑いながら、わしゃわしゃと、私の頭を撫で続けているのが、 父・佐紀優一。
「すぐるちゃん!お母さんがだっこしてあげる!だーいすきよ!」
と、満面の笑みで私のことを、やや強い力で抱き締めるているのが 母・佐紀優希。
私は二人の背中をトントン、と軽く叩く。
「……父さん、母さん。私は元気だよ。二人も元気そうでよかった。それより、急に呼んでごめんね。来てくれてありがとう。」
「「娘の頼みだもの~!当然でしょー!」」
と、綺麗に声をハモらせつつ、更に、ぎゅーっと、私を抱き締めた。
……嬉しいけど、そろそろ本当に苦しかったので、離してもらった。
私は、染山に淹れて貰ったココアを一口飲んで落ち着いた所で本題に入った。
「……今日、お呼びだてしたのはお二人にご相談したいことがあったからです。」
「何だ?」
私は、深呼吸して、
「相談と言うのは、今日、我が家にやってきた青空についてです。」
と、真剣な面持ちで切り出した。
「……そら?なんだそりゃ?」
と、間抜けな表情で父が言う。母は慌てながら、
「やだっ!お父さんってば!ここに来る前にそめちゃんから聞いてたでしょっ!!」
と、間抜けな父に間髪入れずに突っ込んだ。それも若干怒りぎみに。
「……ん?あぁ、そうかっ!今日家にやって来た彼のことか!」
「まったくもう!」
「いやー。あはは?」
母は、なんで覚えてないだの、年のせいにするなだの、とあーだこーだいい合っていた。
私は、二人に青空の事を説明する気でいたから、かなり緊張していたが、二人の様子から見るに染山が事前に説明をしてくれていたようだった。
私は染山に視線を送る。染山は涼しい表情で視線を返してきた。
……まったく、どこまでも優秀な執事様だな。
染山に口パクで、『ありがとう』と伝える。染山の口端が小さく上がった所を確認してから、もう一度本題に入ることにした。
「……青空についてお二人にご相談があります。」
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