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相談
「……青空についてお二人にご相談があります。」
「ふふっ!何かしら?」
と、母はワクワクした様子で私の次の言葉を待った。
私は、二人の目を交互に見つめた後、頭を深々と下げた。
すると、
「ちょっと!すぐるちゃん!?」
「どうしたんだ!?」
と、二人は私の態度にかなり困惑したようだ。久しぶりに会った娘にこんなことをされたら、誰だって面食らうものだろう。土下座では無いものの、私の態度はそれに近いものだったから。
「何があった?顔をあげなさい」
「そうよ!そんな、頭を下げてっ。早く、顔をあげて」
心配する二人を無視して私は続ける。
「──どうか、佐紀家の戸籍に、青空を養子として入れて頂けないでしょうか。」
と、私が言うと二人はピタッと動きを止めた。
普段は優しくて自慢の両親だ。だが、仕事や契約等に関しての話で言えば厳格そのものである。
私は慎重に言葉を選び、二人に伝える。
「…誠に勝手なお願いだと重々承知しております。ですが、これだけはそちらが承諾するまで一歩も引かない覚悟です。」
私は、目を固く瞑り、二人の返事が聞こえるまで待った。思いの外、すぐに返事が返ってきた。
「顔を上げなさい。」
私は、素直にそれに従うことにした。もし、断られたもう一度頭を下げるつもりだったが、二人は、
「なーんだ、そんなことか。
……あー、驚いた。いいに決まってるだろ。」
「本当よねー。急に改まって何かと思ったら…まったく…。うふふっ!そんなの、承諾するに決まってるでしょう?」
と、私の想いとは裏腹にいつもの優しい両親の姿に、私はこっそり胸を撫で下ろす。
再び私は、二人の目をしっかりと見つめ向き直る。
「父さん、母さん…本当に、ありがとうございます。」
と、感謝の言葉を伝えた。二人はにこにこと微笑みながら、
「「かわいい娘の頼みだからとーぜん!」」
と、二人のきれいに重なった声が返ってきた。その返事が私により強く安堵感を与えてくれた。
すると、母が躊躇いながら、
「…あたしたちはそれでも構わないけれど…。でも、青空くんは、れっきとした湯梨浜 鬱切さんの子供なんでしょう?」
と、言った。私は、はっきりと明言する。
「はい。正真正銘、湯梨浜鬱切の子供です。」
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