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 私はブサイクだ。  どのくらいブサイクかというと、この世の鏡全部パーンしたくなるくらいブサイクだ。悲しい。前世よっぽど悪いことをしたんだと思う。  寝ている神様の顔にマッキーで落書きしたとか、渾身のカンチョウかましたとか、たぶんそんなとこだ。  こんなことを思い始めたのは高校、いや中学に入った頃からだった。家族はみんな私を可愛いと言ってくれたし、私も何の疑いもなくそう思っていた。  なぜだろう、みんなと同じ制服を着始めた頃から急に鏡を見るのが恥ずかしくなってしまったのだ。  例えばこの天パで猫っ毛の髪。伸ばせばマシになるかと思いきや、強情な捻くれ遺伝子はそう簡単に折れてはくれなかった。もちろん坊主にする勇気はない。  何も詰めてないのにふくふくしたほっぺ。無駄に色白なせいでよく触られる。「美湖の大福には幸せが詰まってるねぇ」なんて言われても、実際詰まってるのは脂と絶である。韻踏んだ。  ミジンコみたいな短い足。制服は校則でいじっちゃいけないからひと昔前の女番長みたいになるし。要するに何を着てもチンチクリンで似合わない。  私はブサイクだ。  そんなことないよ、という慰めすら嫌味に思ってしまうんだから、きっと心もブサイクだ。せっかくマヤちゃんたちがクリスマスみんなで出かけようって誘ってくれたのに断ってしまった。用事なんて何もなかったのに。  とにかくチビチビブサイクな私服を見られるのがたまらなく嫌だった。  だってメンバーにはあの真嶋君がいる。告白する夢だって諦めきれてないのに、その前に嫌われるとか絶対に嫌だ。  マヤちゃんたちが羨ましい。ごく平均の身長で、普通の髪質で、どんな服でも着られるしメイクだって映える。なのに「私めっちゃ可愛ないぃ」って言う。人の気も知らないで、笑いながら口癖みたいにそういうのだ。  そんな時私はいつもしたくもないムカムカに襲われる。今日は特にだった。
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