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「じゃあ、にゃんにゃんポーズお願いしまぁす、せぇのぉ!にゃんにゃん♡」
「にゃんにゃん♡」
「ありがとぉ~、また来てね、ご主人様ぁ♡」
可愛く甘くねっとりとした声に後ろ髪を引かれながら俺はメイド喫茶を出る。
「あーあ、俺も随分、老けたなぁ」
もう50歳。肩も腰も軋み、悲鳴を上げている。昔はジャニーズの○○君に似てる!とかイケメン過ぎでしょ!とかよく言われてモテていたのに。
今やもう誰も、俺には目を向けない。それどころか若者からしたら俺なんか老害だ。全くやはり女というものはろくでもない。
皆が皆、より若い奴に手を出すんだ。
「本当に、若さと金にしか目が無い奴らだ」
俺はまだ財力があるからいい。会計は財布から一枚カードを出して「これで」。なんて俺はかっこいいんだろう!カードで会計を済ませる男、なんてスマートなんだろう!
皆、俺の魅力に気付いていない!
「あ、あのー、落としましたよ…財布」
「あ?」
俺は段々と上機嫌になってきた思考回路を止められて少し腹が立つ。声の方を向くと、ものすごく可愛い女子高生が俺の財布を持っていた。
一瞬で俺は魅入られる。
目はきりっとしていて鼻は高く、日本美人、大和撫子風の顔立ち。身長は155くらいだろうか、丁度いい。なんてったって胸だ。普通より大きい。
それに普通の女より少しふっくらした太ももやふくらはぎも煽情的だ。
「財布…落としましたよ。…あの、大丈夫、ですか?」
「……あ、はい。ありがとうございます。えっと、服装的に女子高生だよね?か、可愛いね」
今どきセーラー服だなんて、なんてわかっている学校なんだろう。俺は目の前の女子高生に見惚れ、思わぬ言葉を発してしまった。
「えっ…」
流石に引かれてしまっただろうか。こんな老害一歩手前のエロ親父にこんなことは言われたくないよな。
「わぁ、ありがとうございます。可愛いなんて、とっても嬉しいです。何しろ人生初めて言われたもので」
「そ、そんなに可愛いのに!世の中の人は見る目ないよ!」
俺が必死になって叫ぶと、女子高生はうふふと笑った。その笑顔が控えめで、また可愛らしくて、この頃のJKと呼ばれる部類とは大違いだ。
「ねぇ真純ぃ、そんなじじぃに構ってたらお持ち帰りされるよぉ~」
突然少し遠くからギャル特有のねちねちした声が聞こえてきた。声の主はどうやらこの女子高生を呼んでいるらしい。
そうか…この子はますみちゃん、というのか。
「そんなことされないよ~、大丈夫だよ!でも今行くね~」
女子高生――ならぬ、ますみちゃんは俺にもう一度笑いかけてから遠くへ去って行ってしまった。
俺はその日、すごく夢心地だった。勿論、はかどったのである。
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