お家探し②

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3日後、内見予約がとれた5つの物件を見るために真琴さんと予約した不動産屋へ向かった。 最近増えている、同じ物件を複数の不動産屋が管理受付している中でも物件の写真が多い会社を選んだ。 写真掲載が多いのはネット媒体の特権だと思う。 知りたい箇所がわかりやすいピンポイントな写真、しっかりと全体を捉えた写真などが多いほど生活内容の想像もしやすくなって実際に見に行って確認したくなるもの。 これは本当に会社によって違うし、借り手側の立場を考慮したカメラアングルができる、社員さんの腕にも拠る。 下手な写真はいくらたくさんあってももういいや、ってなっちゃうよね。 不動産屋の最寄り駅から歩くこと5分。 「駅から近かったね」 「そうだね。わかりやすいとこにあってよかった」 ずっと繋いでいる手が温かい。 「んふふふ」 嬉しくなっちゃうな。 「え? どうしたの?」 「新居、探してると新婚さんみたい」 語尾にハートマークいっぱいつけたい。 「なんでそんな可愛いこと外で言うの?」 「言いたくなったんだもん。真琴さんもそう思わない?」 「思うけどさぁ~」 言いながら私の耳のそばまで顔を近づけてきた。 「外じゃ抱き締めらんないじゃん」 「そう?」 繋いだ手とは反対の腕を真琴さんの首に巻き付けて一瞬だけきゅっと引き寄せた。 「恥ずかしがり屋の真琴さんも大好き」 「~~~~~~っ」 耳が真っ赤になってる。 (可愛い) クスクスと小さく笑いながら不動産屋の自動ドアをくぐった。 「いらっしゃいませ」 正面に受付カウンターがあり、そこに座って作業していた社員さんが立ち上がって声をかけてくれた。 (わぁ…きれいな人…) 思わず見惚れるくらいの整った顔立ちの女性だった。 胸のネームプレートには真部(まなべ)、と書いてある。 「こんにちは。良いお天気ですね。本日はどういったご用件でしょうか?」 落ち着いた感じのよく通る声で来店目的を問われ、真琴さんが内見予約をしていた旨を告げると、カウンターの椅子を示されて担当者を呼んできますね、と店舗奥へと姿を消した。 私たちは示された椅子に腰をおとして改めて店内を見回した。 店舗の両サイドに個別ブースが設けられていて、何組か商談に入ってる様子が見える。 店内は淡い色の壁紙に包まれて、統一された調度品、点在するグリーンが清潔感を醸し出していた。 かすかにいい匂いが鼻孔に届く。 私の好きな匂い。 (あ、いい匂いは真琴さんからだわ) 気づいて小さく笑っちゃう。
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