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2時間、くたくたになるほど素振りで模倣を繰り返していた。
やればやるほど成果が出るこの能力をモノにすると、とんでもない力を操れるかもしれない。
自宅に帰ると、玄関横のキッチンで烈の母、幸乃が驚いた顔をしていた。
ベリーショートの髪に切れ長の瞳をさらに細めて、烈の手に持っているバットのことを尋ねた。
「アンタ、また熱心に野球に取り組むことにしたのかい?あたしゃ大歓迎だね」
ニカッと快活に笑った幸乃は酒焼けした渋い声。
「あ、あぁ、ちょっと試したいことがあってさ。ちょっと本気出して、サンコーで野球やろうと思ってさ。また野球道具に金がかかるけど、よろしく頼むよ」
クツを脱いで、玄関横にバットを立てかけた。
「あぁ、いいさ。アタシが臨時の夜の仕事を増やせばいいことさ。好きにやりなさい」
烈はこの若い母に助けてもらっていた。
よわい33歳の幸乃は宝塚の男役のような容姿に男を寄せつける魅力のある女性だった。
夜の仕事で友人のスナックを手伝っている。
その癖、男っ気はなく、ヤン女だった幸乃は豪快で男勝りな面も持ち合わせていた。
「今日はアンタの好きなカレーさ。シャワーでも浴びて、食べようじゃない」
「あぁ」
烈は小さく頷いて応えると、2部屋ある左側の自室に入って、一息ついた。
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