勇者として召喚されたはずが、魔王とその息子達に迫られて困ってます

魔王城での目覚め

　何で、俺のままじゃなかったんだろうか？黒髪・黒目の日本人成人男性。
　若い青少年が必要なら、普通にその年代の者を呼べばいいだけだ。順応力に長けた厨二病患者もいたはずだ。

－わけがわからない。『水咲　奏(おれ)』でなく
　てはならない理由など、なかっただろう－

　ならば、何故。そう言う若者でなく、俺が呼ばれた？望む者じゃなく、望まぬ者をわざわざ呼ばねばならぬ理由がどこにある？
　ある日、俺が突然消えたら………彼女はどうなる？意地っ張りで強気な彼女だが、天涯孤独の身故、寂しがり屋だ。

　施設育ちで、身寄りもなく。素性の知れない自分に負い目を感じていた。そんな彼女の哀しい孤独に、俺は惹かれた。
　俺のプロポーズに、目を見開き、泣き出した彼女の表情は、昨日のことのように思い出せる。

　彼女を愛し愛され、やっと『幸せ』を甘受させてあげようと思っていた矢先だったのに！
　正に『天国から地獄』とは、このことだ。異世界だけど！地獄どころか、魔族領だけど！

　しかも。あのまま気を失って。『夢オチ』じゃないなら、ここって魔王の居城なわけだろう。
　この無駄に広い部屋の、不必要な調度品を見る限り、魔王はセンスがいいのだろう。いや、召し使いとかの選定眼が良いのかも知れないけど、レイアウトは俺好みと言ってもいい。

　………………今、気付いたんだけど。俺、服着てないんだよね。異世界(ここ)に来た時点で、来ていた服は、大きくてサイズが合わないだろう。
　成人してからの努力の賜物で、躰つきは男らしくなったが、この頃は、結構華奢寄りだったんだよな。

　(今の)身長こそ、178センチと平均より高かったんだけど。高校入ってから、20センチ以上伸びたのに、体重変わらなかったくらいだからな。
　顔立ちや躰つきからして、十八～二十ってとこか。高三～大二ってとこだから………鍛える前だ。だから、この体型なんだな。

　男としては情けない。よく言えばスレンダー、悪く言えば貧弱だ。