魔王城での目覚め

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 『恩を仇で返す』ような真似なんて出来ない。こんなにも良くしてくれるいい子に、刃(魔法もだが)なんて向けられない。  身体的以前に、精神的にキツ過ぎる……ってか、俺の良心が死ぬ。  あぁ。オレを気遣わしげに見つめてくるナートの瞳が、まるで〝捨てられた仔犬〟のようだ。くぅ、可愛い。澄んだ紅玉(ルビー)のような、無垢な瞳をしてるナートに、邪気など欠片も感じない。  見た目が十代半ばであるからか、可愛いとしか思えない。外見がそうであるだけで、実年齢まではわからない。  そう言えば、ナートだけが象牙色の肌だな。角もないし、ナートの母は人間だった、とか? (※ナートは魔族として成人していないため、角が生えていないことを奏は知らない。)  髪色だけは、ナートだけが魔王と同じ黒髪だけど。ナートの母が黒髪だったって可能性もあるけどな。 -そんなことをつらつらと考えているうちに、目的地に着いたらしい。目の前にそびえる、荘厳な扉は『ギイイィィーッ』と言う重苦しい音を立てて開かれた。
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