謁見の間にて

2/25
前へ
/262ページ
次へ
-魔王城内 謁見の間-  足を一歩踏み入れた時点で感じた。この肌で感じるような威圧感は、恐らく魔王のもの。  嘘だろう。素の魔王は、こんなにも凄かったのか………。昨日はカオス過ぎて、わからなかったと言うか、気付けなかった。しかし、そのせいで謎はますます深まったんだがな。  謁見の間は、想像してたのと大差なかった。入り口から続く、深みのある赤い絨毯。正面は、低い段差の階段が三段くらいあって、その上に『魔王の玉座』がある状態。  その一段下の左右に、それぞれの息子が控えている。俺から見て右………魔王から見て左側に長男、右側に次男、と言った感じだ。 「ご苦労、ナート。昨夜はよく眠れたか?勇者よ。」  魔王が俺に問い掛けた瞬間に、先程までの威圧感が消えた……………と言うか、魔王の声音が妙に甘いのは、俺の気のせいか?寧ろ、気のせいであってくれ、と心中で祈った。  俺の横に来たナートが跪いたので、それに倣い、俺も跪いた。所謂『騎士礼』みたいな感じのもの。 「そう畏まる必要はない、勇者。ナートもだ、そなたは余の息子ぞ。それより、勇者よ。もっと(ちこ)うへ来てくれぬか?」  え、嫌だよ。そんな熱っぽい流し目に『身(主に貞操)の危険』しか感じない。と言うか………やめてくれ、魔王。  いくら、俺がノンケでも、超絶美形の誘うような微笑の破壊力が半端ない。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

438人が本棚に入れています
本棚に追加