なに、このカオス

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 フツー、攫われんのはお姫様の役どころじゃないのか?いきなり召喚されたてで、装備すらままならない、レベル1の勇者(仮)と魔王が出会うってないだろ。いや、ないない。 「異世界の勇者よ。ようこそ、我が城へ。歓迎しよう。………しかし、美しいな。」   「は、なっ………え?」  今、この魔王(?)何つった?『美しい』?誰が?まさか、俺のことじゃないよな?  頼む、違うと言ってくれ。でないと、俺のメンタルが、とんでもないことになる。 「へえ、これが人間どもの希望とやらか………イイな、俺の好みだ。」 「うわぁ、綺麗な顔してる~。異世界の人って、みんななの?」 「ふむ。数百年前に我等を封じた勇者達よりも、美しい。そして可憐で清楚だ。」  因みに、第二王子・第三王子・第一王子の順の台詞だ。と言うか、数百年前に封じられたのに、何がどうなって復活したのかが気になるところだ。  全く、全然、ちっともそんなことを考えている状況でなくても。少しでも、現実逃避してなきゃ、今にも気ィ失いそうだ。  で。冒頭の会話に移行したわけだったんだけど。頭が、ぐわんぐわんする。俺の平衡感覚がおかしいのか、床が揺れているのかさえわからない。       -もう…………駄目だ-  俺の意識が急速に遠のく。最後に感じたのは、倒れる直前に誰かに抱き止められたこと。  そして、その腕に包まれた感触が、ひどく懐かしいものであったことだった。
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