謁見の間にて

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 でも、逃げ出したいのは本当だ。ナートには、悪いと思うけれど。俺には無理だよ………こんなに非現実で非日常な状況に順応しろ、なんて。  俺は厨二病患者ではない、一般人だ。厨二病患者を貶めたり、蔑んだりする気はないが、彼等のようにはなれないし、また考えることは出来ない。  俺が『勇者(仮)』としては召喚されたからなのだろうが、怪我をするどころか、五体満足で命の危険がない(っぽい)のは、正直な話、ありがたくはあるけれど………。  だが。魔王とその息子達に、貞操を狙われつつ、求婚されるのは、ありがたくない。〝ありがた迷惑〟ですらない。寧ろ、ありがたみを遥かに凌駕する迷惑さだ。  いや、迷惑を通り越して、恐怖すら感じる。確かに俺は『中性的』と言えるだろうが、紛れもなく『男』である。 -そもそも。見た目こそ若返ってはいるけど  まっさらで無垢な躰とは言い難い-  だって。俺は『女性』の肌を、躰を知っている。とは言え………無論、彼女のものだけだから、経験豊富ってわけでもないけれど。  魔族って、その辺どうなの?人間より長く生きてるなら、恋人や伴侶の一人や二人………いや、十人や二十人いてもおかしくないのかも知れない。  現に、魔王にはそれぞれ腹違いの三人の息子がいる。どう言った事情があったか知らないが、三人の妻がいた………と言うことは間違いないのだ。  王に三人の妻って、少ない方じゃないのか?誰が正室で、誰が側室なのかとかはわからないけれども。  いや、魔族が〝一夫多妻制〟かどうかさえ知らない。まあ、興味もないんだが。  でも。魔王はともかくとしても。三人の息子達は初婚ではないのか?妻だの嫁だの言ってるけど、この場合………俺は正室なのか、側室なのか?
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