願う 

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僕は丸まると太り、コロコロと転がったままの仔犬を抱き上げようと体に手を差し入れた。胸元へ抱き上げようとした瞬間、紐に引っ張られ仔犬の体が手のひらから落ちそうになる。 僕は理解した。 長めにしていた紐が30センチも残っていない。残りの紐が仔犬達の首を絞め殺してしまったのだと。 どうやったらこんなふうに絡まってしまうのか分からない程に紐はこんがらがっていた。 結び目から10センチあたりから三本を編んだように一本に絡まり、三匹の仔犬の首には手では解けそうにないほどきつく巻き付いていて。 まだ体は柔らかくて死の感触も薄かった。それでも確かに仔犬たちは死んでいた。脇の下に差し込んだ手にあの温もりはいくら待っても伝わってこない。 仔犬達が助けて苦しいと母犬に向かって鳴いたに違いない。助けて助けてとヨタヨタゆっくりのたまいながら声を上げ続けたに違いない。紐から逃れようと動けば動くだけきつく絡まっていく悪夢にどれだけの時間苦しんだんだろう。 バディはどうにかしようとしたよね。でも犬の足ではどうしようもできない、僕にだってわかる。 痛いよ、苦しいよ、怖いよ、助けてママ、そんな声を永遠聞きながらバディは我が子が死んで行くのを横でずっと見ていたんだ、何もできずにずっと。 ただ僕が来るのを信じて、ずっと、一晩中ずっと、ずっと。 ――僕が殺した。 僕が紐なんかでつないだから。子犬は繋がなくても母犬の側を離れなかったに違いない。一晩ぐらい犬小屋の扉を閉めておけばよかった。こんなに長い紐で繋げば絡まってしまうって事どうして考えられなかった。なんて馬鹿なんだ、とんでもない事を僕はしてしまった。僕がみんなを殺したんだ。
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