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 彼女に、そして自分にもやれやれと思いながら、落としものを拾い上げる。  金具の下で揺れる、ほんのりピンク色の小さな球体。  アクセサリーや宝石には詳しくないけど、これくらいなら俺だって知っている。  真珠だ。あー、えっと、なんだっけ? そう、アコヤ貝とかから採れるやつ。これはニセモノだと思うけど。  ぶつかった拍子に、あいつのスクールバッグから外れて落ちたのだろう。  どうする? 追いかけるか?   今は刺激しないほうがいい気もするが、いくら配慮したところで、このキーホルダーを見たら、あいつが泣き出すことに変わりはないと思う。現に涙目だったし、どこかでメソメソしてるかも。    後から下手に蒸し返して、誰かに俺が泣かせたと思われたらたまったもんじゃない。  どうせ通学路もほとんど同じだ。中学に上がるまでは、毎日のように肩を並べて帰っていた。 「……ったく、世話の焼けるやつ」  俺はため息交じりに呟くと、気まずそうなカップルを差し置いて、すっかり遠くに消えた幼馴染を小走りで追った。
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